📝 はじめに
医療費への備えを考えるとき、多くの人が「医療保険に入るべきか?」「それとも高額療養費制度で十分か?」と迷います。
ファイナンシャルプランナー(AFP)の視点から見ると、これは単なる保険選びではなく、“医療リスクをどの程度まで自分でカバーできるか”という戦略の問題です。
医療保険には安心感がありますが、長期的には固定費となり、数十年単位でみれば大きな支出になります。
一方の高額療養費制度は、医療費を一定額まで抑える公的制度として、非常に優秀な仕組みです。
本記事では、両者の仕組みを比較し、「自分にとって本当に必要な備え方」を分かりやすく解説します。
✅ 高額療養費制度の仕組みと特徴
高額療養費制度は、医療費の自己負担が一定額を超えたときに払い戻される制度です。
健康保険に加入していれば誰でも利用でき、収入区分ごとに自己負担の上限が設定されています。
▶ 主なポイント
- 同月内の医療費が対象(家族合算も可)
- 自己負担上限は年収区分により異なる
- 保険適用外(差額ベッド代・先進医療など)は対象外
💡詳しくは 厚生労働省「高額療養費制度」 をご覧ください。
解説:
制度を使えば、月10万円を超える医療費負担はほぼ発生しません。
ただし、差額ベッド代や食事代、先進医療費などは対象外のため、その部分をどうカバーするかが課題です。
✅ 医療保険の役割とメリット
医療保険は、公的制度の“すき間”を補うための民間保障です。
入院や手術の際に現金給付を受けられるため、使い道が自由という点が特徴です。
▶ メリット
- 差額ベッド代・食事代など実費を補える
- 長期入院や休業時の収入減少に備えられる
- 給付金は自由に使える(生活費補填も可能)
アドバイス:
過剰に保障を重ねるよりも、高額療養費制度で足りない部分を最小限カバーする設計が理想です。
「安心を買うためのコスト」を冷静に判断することが、賢い保険選びの第一歩です。
✅ 医療保険 vs 高額療養制度 比較表
| 比較項目 | 医療保険 | 高額療養費制度 |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 入院・手術・通院 | 保険適用診療の自己負担分 |
| コスト | 月数千円〜 | 無料(公的制度) |
| 自己負担限度 | 契約内容による | 所得区分ごとに上限設定 |
| 対象外費用 | なし(契約により異なる) | 差額ベッド代・先進医療 |
| 向いている人 | 貯蓄が少ない/長期入院が不安 | 公的制度を重視する堅実派 |
結論:
どちらか一方を選ぶのではなく、**「公的制度+必要最小限の保険」**の組み合わせが最適です。
✅ 実際の医療費負担を見てみよう
厚生労働省の調査によると、1回の入院で平均自己負担は約21万円。
高額療養費制度を利用すれば、実質的な負担は10万円前後まで下がります。
しかし、差額ベッド代や食事代を含めると20〜30万円ほど必要になることもあります。
💡参考:厚生労働省「医療給付実態調査」
この程度の出費であれば、生活防衛資金で十分対応可能です。
ただし、自営業者や独身世帯のように収入が不安定な人は、医療保険をプラスすることで安定感が高まります。
✅ 賢い選択をするための設計ポイント
- 生活防衛資金が100万円以上あれば、医療保険は軽めでOK
- 共働き家庭は、重複加入を避けて支出最適化を
- 自営業・フリーランスは長期入院リスクに備える
- 60代以降は掛け捨て型+貯蓄併用が合理的
アドバイス:
医療保険は「安心のための支出」。
目的を明確にして加入すれば、将来の無駄な保険料を削減しつつ、安心も得られます。
✅ まとめ:公的制度を理解し、保険は必要最小限に
医療費対策で大切なのは、制度を理解して、足りない部分だけを保険で補うこと。
高額療養費制度を知らないまま加入すると、保険料を払いすぎてしまうケースが多く見られます。
今日できることは、自分の年収区分に応じた「自己負担上限額」を確認することです。
制度を知ることこそ、賢い家計防衛の第一歩です。

