✅ 年金は「いつからもらうか」で一生の収入が変わる──AFPが中立に解説
年金は原則65歳から受給できますが、「60歳から早く受け取る」「70歳まで遅らせて増額する」といった選択肢もあります。
どちらが“得”なのか──この問いは、人生の設計にも大きく関わるテーマです。
AFP(ファイナンシャルプランナー)の視点から見ると、早期受給と遅延受給にはそれぞれ明確なメリット・デメリットがあり、自分のライフプランと照らし合わせて選ぶべき選択です。
この記事では、「繰上げ受給」「繰下げ受給」の基本制度とその損得を、具体例と数値で分かりやすく解説します。
✅ 年金の受給開始は「60〜75歳の間」で選べる
65歳は“標準”、早く or 遅くで金額が変動
| 開始年齢 | 増減率(老齢基礎年金) | 月額影響 |
|---|---|---|
| 60歳(繰上げ最大) | 約▲24% | 約4分の3に減額 |
| 65歳(標準) | ±0% | 本来の年金額 |
| 70歳(繰下げ) | 約+42% | 約1.42倍に増額 |
| 75歳(繰下げ最大) | 約+84% | 約1.84倍に増額 |
※増減率は2022年度以降の制度改正に基づく
【ポイント】
- 1か月繰上げ:▲0.4%ずつ減額
- 1か月繰下げ:+0.7%ずつ増額
- 一度選ぶと原則変更不可(特別な理由がない限り)
👉 厚労省|年金の繰上げ・繰下げ制度
✅ 早期受給(繰上げ受給)のメリット・デメリット
早くもらえば長く受け取れるが、金額は大きく減る
【メリット】
- 60歳から生活費の補填に使える
- 働かずに年金を使って生活設計ができる
- 健康状態に不安がある人には有利
【デメリット】
- 減額された年金は一生そのまま(途中で回復しない)
- 就労収入との併用でさらに年金が減額される可能性
- 長生きした場合、トータルで不利になることも
【試算例】
- 月額10万円の年金を60歳で受給 → 約7.6万円×12ヶ月×25年=2,280万円
- 同額を65歳から受給 → 10万円×12ヶ月×20年=2,400万円
→ 77歳より長生きすれば、65歳受給の方が得
✅ 遅延受給(繰下げ受給)のメリット・デメリット
受給額が増える「長生きリターン型」
【メリット】
- 最大で約1.84倍の年金額にアップ(75歳から受給)
- 長生きするほどトータルの受取額が増える
- 老後のインフレ・医療費増加への備えになる
【デメリット】
- それまでの生活費をどう賄うかが課題
- 年金を受け取る前に亡くなった場合は“ゼロ”
- 健康不安がある人には不向き
【試算例】
- 月額10万円を75歳から受給(1.84倍)
→ 約18.4万円×12ヶ月×10年=2,208万円(85歳まで)
→ 85歳を超えれば、トータルで65歳より得になる可能性が高い
✅ どちらがトク?判断のヒントは「健康・家計・家族構成」
自分の人生設計と照らして考えるべき3つの視点
【① 健康寿命の見通し】
- 両親・祖父母の平均寿命を参考に
- 自分の健康診断や生活習慣も考慮
【② 就労予定と収入】
- 65歳以降も働く予定なら、繰下げとの相性が良い
- 無職で収入がないなら、繰上げでの早期補填もアリ
【③ 配偶者とのバランス】
- 配偶者が年下・年金が少ない場合は、自分が遅らせると老後の合算収入が安定
👉 金融庁|ライフプランシュミレーター
✅ まとめ:年金は“もらい方”で差が出る時代に
年金は「いつからもらうか」で、一生の受取総額が大きく変わる制度です。
「早くもらって早く減る」か、「遅くもらって長く得る」か──人生設計と体調、家計のバランスを見て選びましょう。
【今日からできるアクション】
- 自分と配偶者の年金見込額をねんきんネットで確認
- 健康・収入の見通しを紙に書き出してみる
- 不安な場合は年金事務所かAFPへ相談
制度を知り、自分に合った“年金戦略”を立てて、安心の老後を準備していきましょう。

