【FP解説】親の介護費用はいくら必要?介護保険制度・自己負担額・備え方をわかりやすく解説

老後資金と年金対策

親の介護が始まったら、いくら必要になる?

「親に介護が必要になったら、毎月いくらかかるの?」「介護保険があるから、それほどお金を準備しなくても大丈夫?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

介護費用は、要介護度や在宅・施設の違い、利用するサービスによって大きく変わります。公的な介護保険制度を利用すれば費用のすべてを自己負担するわけではありませんが、食費や居住費、日用品、住宅改修など、介護保険だけではカバーしきれない支出もあります。

生命保険文化センターの2024年度調査では、介護にかかった一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円となっています。さらに介護期間は平均55.0か月(4年7か月)です。介護は短期間で終わるとは限らないため、家計への影響を長期的に考える必要があります。

AFP(ファイナンシャルプランナー)の視点
親の介護費用は、子どもがすべて負担する前提で考える必要はありません。まず親自身の年金、預貯金、介護保険でどこまで対応できるかを確認し、不足する部分を家族で考えることが大切です。

この記事でわかること

  • 親の介護にかかる費用の目安
  • 介護保険制度の基本的な仕組み
  • 自己負担1割・2割・3割の違い
  • 在宅介護と施設介護の費用差
  • 介護費用を準備するときのポイント

✅基本知識

結論からいうと、介護費用は「介護サービスの自己負担」だけで考えてはいけません。介護が始まると、サービス利用料以外にもさまざまな費用が発生します。

主な費用具体例
介護サービス費訪問介護・デイサービスなど
住宅改修費手すり設置・段差解消など
福祉用具介護ベッド・車いすなど
施設費用居住費・食費・日常生活費など
その他おむつ・交通費・見守りサービスなど

特に施設介護では、介護サービスの自己負担とは別に居住費や食費などが必要です。一方、在宅介護でも住宅改修や福祉用具、家族の交通費などが発生することがあります。

✅制度・仕組み

公的介護保険では、介護サービスを利用した場合の自己負担は原則1割です。ただし、一定以上の所得がある方は2割または3割負担となります。

自己負担割合考え方
1割原則的な自己負担
2割一定以上の所得がある場合
3割さらに所得が高い場合

例えば、介護保険の対象となるサービスを月10万円分利用し、自己負担割合が1割なら、基本的な自己負担は1万円です。2割なら2万円、3割なら3万円となります。

ただし、居宅サービスには要介護度ごとに1か月の支給限度額があります。限度額を超えてサービスを利用した部分は、原則として全額自己負担になるため注意しましょう。

✅比較表

介護費用は、在宅介護と施設介護でも大きく異なります。生命保険文化センターの2024年度調査では、月々の介護費用は在宅が平均5.3万円、施設が平均13.8万円でした。

比較項目在宅介護施設介護
月々の費用平均約5.3万円約13.8万円
主な費用訪問介護・通所介護など施設利用料・食費・居住費など
家族の負担介護時間の負担が大きくなる場合あり在宅より軽減されやすい
住居費自宅の状況による施設の種類により大きく異なる

費用だけを見ると在宅介護の方が低く見えますが、家族が仕事を減らしたり、遠距離介護で交通費がかかったりすると、家計への影響は表の金額だけでは判断できません。介護を考える際は「親の支出」と「家族側の負担」の両方を確認することが重要です。

✅シミュレーション

親の介護費用を考えるときは、「毎月いくらかかるか」と「介護が何年間続くか」を分けて考えるとイメージしやすくなります。

生命保険文化センターの2024年度調査では、介護に要した一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円、介護期間は平均55.0か月でした。これらの平均値を単純に組み合わせると、介護費用のイメージは次のようになります。

項目金額・期間
一時的な費用約47.2万円
毎月の介護費用約9.0万円
平均介護期間約55か月
月額費用×55か月約495万円
一時費用を含めた単純計算約542万円

あくまで平均値を使った単純計算ですが、介護には数百万円単位のお金が必要になる可能性があることがわかります。

ただし、「親の介護には必ず約542万円必要」という意味ではありません。在宅か施設か、要介護度、介護期間、利用するサービス、親の収入や資産などによって実際の負担額は大きく異なります。

✅在宅介護と施設介護ではどれくらい違う?

同調査では、月々の介護費用は在宅で平均5.3万円、施設では平均13.8万円です。仮に55か月続いた場合を単純計算すると、次のようになります。

介護方法月額平均55か月続いた場合の単純計算
在宅介護約5.3万円約291.5万円
施設介護約13.8万円約759万円

施設介護は居住費や食費などが必要になるため、在宅介護より月々の費用が高くなる傾向があります。ただし、在宅介護では家族が介護のために勤務時間を減らしたり、仕事を休んだりすることで、直接的な介護費以外の負担が発生する可能性があります。

そのため、介護費用を比較するときは、サービス料金だけでなく家族の働き方や交通費、時間的な負担まで含めて考えることが大切です。

✅高額介護サービス費とは?

介護保険サービスを多く利用して自己負担額が高額になった場合には、「高額介護サービス費」という負担軽減制度があります。

1か月に支払った介護保険サービスの利用者負担が所得区分ごとに定められた上限額を超えた場合、一定の要件のもとで超過分が支給される仕組みです。

ただし、施設での食費や居住費、日常生活費、介護保険の対象外となるサービスなどは、高額介護サービス費の対象にならないものがあります。「自己負担には上限があるから、それ以上は一切かからない」と考えないようにしましょう。

✅メリット

  • 介護保険によってサービス費用の自己負担を抑えられる
  • 所得に応じた自己負担割合が設定されている
  • 高額介護サービス費などの負担軽減制度がある
  • 住宅改修や福祉用具にも介護保険を利用できる場合がある
  • ケアマネジャーなどに介護サービスについて相談できる

公的介護保険は、介護が必要になったときの家計負担を軽減する重要な制度です。制度を利用せず、必要な介護サービスをすべて自費で準備すると家計への負担が大きくなる可能性があります。

親に介護が必要になったら、まず住んでいる市区町村の窓口や地域包括支援センターなどへ相談し、要介護認定や利用できるサービスについて確認することが重要です。

✅注意点

よくある失敗・勘違い注意するポイント
介護保険ですべて払えると思う食費・居住費など対象外となる費用があります。
親の資産を把握していない元気なうちに年金・預貯金などを確認しましょう。
子どもがすべて負担するまず親自身の資産・収入から考えることが基本です。
施設の月額料金だけで比較する入居一時金や追加サービス費なども確認しましょう。
介護離職をすぐに選択する介護休業制度や外部サービスなども確認しましょう。

特に注意したいのが、親の介護が始まってから初めて資産状況を確認するケースです。認知機能が低下してからでは、預貯金や保険、不動産などの管理について本人の意思確認が難しくなることがあります。

親が元気なうちに、年金収入、預貯金、加入している保険、住宅、利用している金融機関などについて、必要な範囲で家族間の情報共有をしておくことが大切です。

✅FPワンポイントアドバイス

AFPとして押さえておきたいポイントは、「親の介護費用=子どもの家計から支払うお金」と最初から考えないことです。

まず確認したいのは、親自身の年金収入と預貯金です。そのうえで公的介護保険を利用し、毎月どの程度不足するのかを確認します。例えば親の年金などで介護費用を賄えるのであれば、子どもの家計から大きな金額を継続的に支出せずに済む可能性があります。

また、介護費用を負担するために子どもが自身の老後資金や教育資金を大きく取り崩してしまうと、次の世代の家計まで苦しくなる可能性があります。家族だけで抱え込まず、公的制度や介護サービスを利用しながら長期間継続できる方法を考えることが重要です。

✅親が元気なうちに確認したいこと

  • ☐ 親の年金額を確認する
  • ☐ 預貯金などの金融資産を確認する
  • ☐ 生命保険・医療保険などの加入状況を確認する
  • ☐ 介護費用をどこから支払うか話し合う
  • ☐ 利用している金融機関を確認する
  • ☐ 住まいを今後どうするか話し合う
  • ☐ 地域包括支援センターの場所を確認する

✅よくある質問

Q. 親の介護費用はいくら準備すればいいですか?

必要額は介護期間や要介護度、在宅・施設の違いなどによって大きく変わります。平均額だけで目標を決めず、親の年金や預貯金、希望する介護方法などを確認して不足額を考えることが大切です。

Q. 介護保険を使えば自己負担は1割ですか?

原則は1割ですが、一定以上の所得がある方は2割または3割となります。また、食費・居住費など介護保険の給付対象外となる費用もあります。

Q. 在宅介護と施設介護ではどちらが安いですか?

調査上の月額平均では在宅介護の方が低くなっています。ただし、在宅介護では家族の時間的負担や交通費、仕事への影響なども考慮する必要があります。

Q. 介護費用は子どもが払うべきですか?

まずは親自身の年金や預貯金、公的介護保険などでどこまで対応できるかを確認することが重要です。家族の負担については、親の資産状況や家族構成などを踏まえて話し合いましょう。

Q. 親が認知症になった場合、預金は自由に使えますか?

本人の判断能力が低下すると、家族であっても本人名義の預金を自由に管理できるとは限りません。成年後見制度などが必要になる場合もあるため、親が元気なうちに資産管理について話し合っておくことが大切です。

Q. 介護について最初にどこへ相談すればいいですか?

親が住んでいる地域の市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターなどが相談先になります。介護サービスや要介護認定について相談できます。

✅参考リンク

✅まとめ

親の介護費用は、要介護度や介護期間、在宅・施設の違いによって大きく変わります。生命保険文化センターの2024年度調査では、一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円、介護期間は平均55.0か月でした。

公的介護保険を利用すれば介護サービス費の自己負担は原則1割で、一定以上の所得がある場合は2割または3割となります。ただし、施設の食費・居住費や日常生活費など、介護保険だけではカバーできない費用があることも理解しておきましょう。

大切なのは、介護が始まってから慌ててお金を準備するのではなく、親が元気なうちに年金や預貯金、保険などを確認しておくことです。まずは親自身の資産と公的制度を活用し、それでも不足する部分について家族で話し合うことが、親の介護と自分たちの家計を両立するための第一歩です。